よもや真話

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カテゴリ:STAP細胞問題 > ダブルスタンダード

『日本を代表する研究機関である理研で起きた前代未聞の研究不正の解明にあたり、理研内で真相と科学的真実の解明のため勇気ある行動をとっている研究者が複数名いることは、理研にとって大きな救いである。』

 これは、理研改革委員会提言の中にある理研有志に対する賛辞である。その「研究不正に立ち向かう勇気への称賛」の過剰さに私は違和感を禁じ得ない。その一方ではSTAP騒動と同時期に、岡山大学で研究不正の隠蔽問題が起きていて、中国地区の地域医療ネットワークの核となる「岡山大学で起きた研究不正の解明にあたり、真相と科学的真実の解明のための勇気ある行動をとった研究者」はふたりとも解雇された
 こちらの「研究不正に立ち向かう勇気」に対しては、岸改革委員会のメンバーから何か言うことはないのだろうか。

 ところで先日、中国ニュース配信サイトのレコードチャイナに、理研に在籍する中国人科学者を取材したこんな記事が出ていた。

「小保方晴子氏の事件が起きるまでは天国だった」=理研に勤める中国人学者が見た日本の研究環境
http://www.recordchina.co.jp/a154053.html
 新華社通信の取材を受けた凌楓氏は、その中でこういうコメントしている。
「任期制の研究員はプレッシャーがある。契約期間内に一定の研究成果を出せなかった場合、契約を更新してもらえないだけでなく、他の機関に再就職するのも難しくなる。そのため、目前の功利を急いで求める研究員も出てくる。昨年、世界の学術界を震撼させた小保方晴子の論文ねつ造事件も理研で発生した」

 この「目前の功利を急いで求める研究員」とは誰のことか、今ではSTAP問題に注目している大半の人が理解しているだろう。小保方さんは手記の中で『2012年3月になると私には、若山先生から若山研のメンバーをフルに使って急いで幹細胞株化の論文を仕上げるように指示が出された。』と証言している。そしてこれは理研本来のあり方とは違っていたようだ。
『凌さんによると、野依良治・元理事長は、誰もやっていない研究をするように常に鼓舞し、自分が編み出した新しい研究の原点を基礎にそれを発展させていくようにと指示していた。理研は論文の数をむやみに追及することはなく、求めているのはクオリティの高い論文だ。最大で40〜50人が在籍するような研究室でも、1年に1つの論文も発表しないというケースもある。』

 また、凌氏のコメントにはこういうのもあった。
 「近年、日本の学術研究の雰囲気は悪化している。小保方晴子氏の事件が起きるまでは、理研の研究環境は良好で、科学研究経費をいろんな所からもらえるなど、研究の面では『天国』のようだった。」

 結局STAP騒動は、笹井-小保方ラインの悪事と決めつけた理研有志の暴走が、自分達の首を絞めたということだ。当人たちは自分の正義を信じていたのだろうが、何のことはない、予算獲得に四苦八苦して自分の思うような研究も出来ない研究者達からの理研の恵まれた研究環境に対する嫉妬に煽られて踊らされていただけなのだ。日本分子生物学会の理事達から相次いだ声明にしろ、岸改革委員会の理研有志に対する過剰なまでの称賛にしたって、そういう大学の先生たちの理研に対する嫉妬の表れでしかない。

 その結末は「あの事件の影響は大きく、それまでの方針を変えないわけにはいかなくなった。あまりに独特な研究プロジェクトは審査を通りにくくなり、特に末端の研究員は、自分の研究を続けていけるかが分からない状態」となったのだ。これは理研有志の自業自得としか言いようがない。理研が日本中から嫉妬の攻撃に晒されている中で、CDB三銃士などと正義を気取って理研を内部崩壊させた戦犯として、歴史にその名は刻まれるだろう。

 東京大学で匿名の告発により大量の論文不正が指摘され、大学側も本調査に入ったというニュースが流れたが、報道の仕方は基本的にはベタ記事扱いで、ネットの議論を見渡しても今のところあまり活発な議論は交わされていないようだ。マスコミのこうした状況に対して「DORAのブログ」では舌鋒鋭く批判し問題提起をしている。
「ビビるマスコミ」

 http://blogs.yahoo.co.jp/nx3262p0yz057j/15109792.html


 この報道は、マスコミ各社に届いた告発状と、東大広報からの記者発表を受けての報道になるが、DORA氏も批判するように各マスコミのスタンスは大人し過ぎるのではないだろうか。

 東大の記者発表にはこういう注意がある。

『なお、報道の取扱いに関しては、本調査の開始が被申立者の不正行為を認定するものではないことに留意いただき、被申立者の現在の研究活動への影響を含め、ご配慮いただきますようお願いいたします。』

http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_280920_02_j.html
 大学の立場からマスコミへのこの要請はもっともなのだが、マスコミ側は大人しい犬のように東大の結果発表を待つのだろうか。STAP騒動の際にも、理研からはマスコミに対して同様のお願いはされていたはずだが、「マスコミの使命」とばかりにマスコミ各社は著者らに対して直接取材攻勢をかけ、それは渦中にある著者らの心神に支障を来すほどの激しいものだった。中でも毎日新聞の須田桃子記者などは「殺意を感じる」程のメール攻撃でスクープ報道に明け暮れ、それを纏めた本を出版し「大宅壮一ノンフィクション大賞」を受賞したことは記憶に新しい。

 今回明らかになった
不正問題は、医学・生科学分野における「学界の腐敗構造」を暴く不正告発である可能性が高く、「マスコミの使命」で言えばこの東大の不正問題こそが、日本の科学の信頼に関わる問題として、報道価値としてもSTAP以上に相当大きな問題の筈だが、今のところマスコミ各社の対応は至って静かである。大手マスコミでは、産経新聞だけが疑惑の当事者として門脇孝教授の実名を挙げ、ちょっとだけ突っ込んだ報道をしているが、朝日、毎日、読売は東大の広報そのまんまといった報道で、お上のお達しを待つ従順な犬といった感じだ。
 ただ、新聞社の姿勢としてはこういう情けない状態でも、記者個人レベルで言えば毎日新聞の須田桃子記者など2匹目のドジョウを狙ってスクープの取材を試みているかも知れない。しかし、須田記者がいくら張り切ったところで、STAPの時のようにリークの餌をホイホイくれる取材など出来る筈もないので、何のスクープも取れずに馬脚を現すことになるだろう。この事案はジャーナリストの真の実力が試されることになるのではないだろうか


 テレビニュースではNHKも報道していて、疑義の具体的内容にも触れたものになっている。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160921/k10010701041000.html

 しかし、取材先は『大学によりますと、告発について6人の教授はいずれもコメントはないと話しているということです。』のように、大学広報を通した取材で、専門家のコメントも取っていなければ、疑惑の当事者に直接に取材依頼もしていない様子。大学からのお願いを素直に聞く従順な犬のようだ。STAP騒動とのこの違いはいったい何なのか。


 STAP騒動では、華々しい記者発表で一夜にしてスターの座に祭り上げられた若き女性研究者の論文不正事件という、如何にも絵になる事件について、「不正を暴く」という大義名分を旗印にマスコミは狂ったように連日連夜の報道を繰り広げていた。しかしSTAP事件で狂ったように騒いだのはマスコミだけではない。

 日本分子生物学会は声明まで出して大騒ぎした。分子生物学会理事長の個人ブログ仙台通信を始めとして、ネット上では連日連夜の謎解きゲームが展開された。大隅典子氏を筆頭とした分子生物学会メンバーの行動は、マスコミに踊らされる「ネトウヨ」と何ら変わりないものだった。もし彼らがネトウヨではなく純粋に不正問題を憂慮しているというのなら「不正は許さん!」の姿勢は今回も同じでないとおかしい筈だが、小保方さんを叩いていた研究者たちの反応はそうではない。東大当局のお沙汰が出るまで待てと「おあずけ」されているかのように静かなのだ。


 STAP騒動で「不正は許さん!」と言って大騒ぎした中山敬一、大隅典子、近藤滋氏ら元分生理事達は、東大の不正問題には1ミリも触れずに全くの沈黙を続けている。STAPであれだけ正義を振りかざしていた研究者達も、東大の先生を怒らせたら自分たちの仕事にも支障が出てしまうとばかりに大人しくしているのか。「ガチ議論」などというサイトも今では匿名A氏の独り言に誰も付き合わなくなり、「捏造に怒りを!」なんて単なるパフォーマンスに過ぎなかったことも露呈した。「不正は許さん!」と言っていた人達の欺瞞には呆れるばかりだ。東京大学という権威の崩壊を防ぐために、このままウヤムヤに終わらせようとする圧力でもあるのではないかという妄想までも膨らんでしまう。


 結局、STAP騒動における日本分子生物学会理事長声明を初め大騒ぎした研究者たちの目的は、「不正は許さん!」ではなく、「理研の予算独り占めは許さん!」「目立つ小保方が許せん!」でしかなかったということなのだろう。そしてこれは岡山大学の問題に対する対応の差にも表れている。

「理研と岡山大学の問題の先にあるもの」
http://mitsuo.blog.jp/archives/1050154734.html

 小保方さんが大学院生時代に書いた論文の撤回が先日報じられたが、これは小保方さんの問題というよりも、大和研でも若山研同様にオリジナルデータをチェックしていなかったという話であり、「DORAのブログ」で指摘するように『小保方氏の所属した研究室だけがたまたまそうだったなどとは非常に考えにくい』話だ。
http://blogs.yahoo.co.jp/nx3262p0yz057j/14255624.html
 毎日新聞等一部の新聞が「小保方さんが出したデータの不備」を強調する報道をしているが、本来、この撤回について正確に報道するなら「東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設の大和研究室で行われた研究に関する論文(責任著者:岡野光夫セルシード社外取締役)が、筆頭著者を除く共著者3人の申し出により撤回された」とするべきだろう。前にも書いたように、私はこの撤回は「STAP騒動に関する一連の問題すべてが、捏造常習犯小保方ひとりでしでかしたこと」という形にしてしまい、大学院教育の欠陥を誤魔化し保身を図ろうとする早稲田大学先進理工学研究科からの工作であるという「陰謀論」で捉えているが、この論文撤回も石川智久氏の刑事告発同様、とんだ「やぶ蛇」になるだろうと私は思う。

 そもそも、筆頭著者に無断で論文撤回などやって良いものなのか。既に指摘されているように、論文共著者達は小保方さんと連絡を取りたければ代理人を通せば簡単に連絡は付く筈であり、小保方さんに「無断で」撤回を決めたことはまず間違いないだろう。ネイチャープロトコルが連絡を取れないとしているのは、小保方さんは既に「科学コミュニティの人」でなくなっているのにも係わらず、代理人を通して接触する努力をしなかったというだけの話だろう。

 話を戻すと、結局、若山研と同じような問題が大和研でも起きていたということは、DORA氏も指摘するように『どこの研究室でもフツーにやっていたこと』の可能性があり、これを契機に東大加藤研の問題も再度クローズアップされ、「ガチ議論」 の匿名A氏のような存在によって業界の「腐敗体質」が監視され、いずれマスメディアからも糾弾される方向に進むことになるかもしれない。

 STAP
騒動で見られた科学者社会の小保方バッシングは異常なものだったが、一般社会の常識としては他者に完璧を求め「キレイゴト」を言う人間ほど信用できないものはない。STAP騒動であれだけ騒いだ人達は、本気で不正をなくしたかった訳ではないことは、「捏造にもっと怒りを」という看板を掲げながら、匿名A氏の不正告発に対して誰も反応しなくなった「ガチ議論」の現状を見れば一目瞭然だ。

 「あの日」以来、科学者達の「狼狽」とも受け取れる反応を多数目にするようになった。保守的な人達の悪あがきで、また人が死ぬようなことにならないように、出来るだけ早くに警察の介入による解決を期待したい。この流れは、手記によっていろいろ不審な行動が指摘されている若山教授だけでなく、得体の知れない圧力によって論文撤回に応じたようにも見える大和教授の身も危険かもしれないと思ってしまうのは考えすぎだろうか。

岡山大学には、岡山大学病院を「地域医療連携推進法人」化し地域医療ネットワークを構築する「岡山大学メディカルセンター」構想があるらしい。http://mainichi.jp/articles/20151211/ddl/k33/040/554000c

岡山大学
の不正対応の問題は構図的には理研とそっくりだ。
「特定国立研究開発法人」のためにSTAP細胞論文の不正問題を大急ぎでテキトーに処理してお茶を濁そうとした理研では、「正義の有志」が立ち上がり、アカデミアからは「不正の実態を明らかにせよ!」と「声明」まで出して大騒ぎをしたが、「地域医療連携推進法人」のために不正問題を揉み消そうとした岡山大学では、「ふたりの教授」が立ち上がったものの、アカデミアからは無視され大学からは解雇されてしまった。

構図としてまるで瓜二つなのに、アカデミアもマスコミも正反対の反応になっている。まあ、マスコミが「権威のお言葉」の拡声器でしかないことは、STAP騒動でも明らかだったし、片瀬久美子氏のツイートでも裏付けられてはいるのだが。また、今月3日に毎日新聞が記事にした「不正調査の問題点」は細かい話でしかなく、岡山大学の問題は近視眼的な科学記者よりも社会部記者が扱った方が良い問題だろう。
片瀬氏の場合はSTAPの時と同じスタンスで行動に一貫性があるので、近視眼なりに信念を貫いていただければ良いのだが、某男性ライターのようにiMuSC細胞論文が意味することについて自分の頭で考えることもなく、著名な科学者のネット証言を継ぎ接ぎしたような「権威のお言葉の受け売り」しか出来ない中途半端な科学ジャーナリストの存在価値はやっぱりないだろう。不正告発者が解雇されても無視し続けている「学会の偉い先生」達の存在も。日本のアカデミアと科学報道は一蓮托生で壊れている。

STAP問題では『日本を代表する研究機関である理研で起きた前代未聞の研究不正の解明にあたり、理研内で真相と科学的真実の解明のため勇気ある行動をとっている研究者が複数名いることは、理研にとって大きな救いである。』とまで褒め称えた理研改革委員会の先生達は、いまどうしてるのだろうか。
STAP騒動の際、理研は自主的に不正調査に乗り出した有志達の研究環境を破壊するような不当なことは全くやっていなかったと思われる。逆にCDB解体を提言し、彼らの研究環境を破壊しようとしたのは国立大学の教授達で構成されていた理研改革委員会の方だ。
一方、岡山大学では不正調査に乗り出したふたりの教授達の研究環境は完全に破壊されまった。STAP騒動であれだけ騒いだ人達は、森山・榎本両教授の「勇気ある行動」に対して見て見ぬふりを続けている。というよりも、両教授の「真相と科学的真実の解明のための勇気ある行動」は、国立大学法人にとっては邪魔臭いだけの存在なのかも知れない。


今回の問題がここまで拗れたのは、STAP騒動で不正論文=研究犯罪というイメージで大変なバッシングが起きたことも要因のひとつなのかも知れない。森山教授らのスクリーニングで発覚した細かい疑義に対して、指摘された側が不正批判の恐ろしさに完全否定で逃げようとした的な何かがあったのかも知れない。

STAP
騒動の際に、不正論文=研究犯罪的な世間のイメージを煽って炎上させたのは、サイエンスライター片瀬久美子氏だったり、科学雑誌「日経サイエンス」編集部の古田彩氏だったり、中山敬一氏、大隅典子氏、近藤滋氏ら日本分子生物学会理事達だったりする。なんせ「詐欺師の持ってきたデータ」呼ばわりなのだから。
石井調査委員会の記者会見後しばらく私は「科学語は正しく日本語に翻訳されなければならない」という主張をしていた。石井調査委員会の不正認定で使用された「捏造」と「改竄」という言葉が、調査委員会から具体的内容を説明された行為に対する日本語として正しくないからだ。論文の体裁上の問題と研究犯罪としての不正問題を分けることなく「不正は不正」として同じ扱いをされた結果、2014年4月1日の理研の公式発表で小保方晴子氏は「捏造犯」とされてしまった。

科学者達が批判するマスコミは、NHK藤原淳登記者だったり毎日新聞須田桃子記者だったりという科学専門記者が「権威のお言葉の拡声器」の役割を果たしているに過ぎない。更に陰からリークしまくる放火魔までいれば尚のことだ。権威のお言葉によってSTAP騒動の狂乱が巻き起こり、大変なバッシングを引き起こしてしまったのだ。そして、日本分子生物学会理事ら生命科学の専門家達は、業界の清廉を装うために小保方氏の研究成果すべてを捏造の産物と決めつけ、故笹井芳樹博士が「STAP現象を前提としないと説明できないデータがある」と言い、理研内外で予断のない検証をすべき「合理性の高い仮説」であると訴えたSTAP細胞研究を叩き潰してしまった。



STAP細胞論文に対する理研の拙速な不正対応が引き起こした悲劇を見て、私はこういった不正問題の対策には「第三者機関の設置」が急務だと安易に考えていたのだが、それは即ち「大学の自治」を放棄することだと指摘されて、言われてみればそうだなと気付いた。しかし、岡山大学のような事態を招かないためにも、大学の自治など放棄して不正問題に対応する公的機関を設置する必要はありそうだ。ただしその場合、その運営資金はどこから出るかと言えば、科学予算の枠内なので「アカデミアの人たちに配られるはずだった研究費を削って捻り出す」ことになる。当然、公的機関を設置するとなれば不正まみれの生命科学系の予算を削って捻出するのが筋だろう。科学予算とは別枠で公正取引委員会みたいなのをという考えは図々しい。基本的に業界内で処理すべき問題なのだから。

結局、理研にしろ岡山大学にしろ、こうした事態になってしまっているのは「学者さんには統治能力がない」ことが主な原因ではないかとやはり思ってしまう。理研と岡山大の問題の教訓としては「科学者に政治的な力を持たせてはいけない」ということだろう。理研や岡山大学で
ガバナンスが機能せず学問の自由が脅かされているのは理系学者が権力を持ったせいだと私は思う。博士論文の不正問題が指摘された早稲田のように、学長が法学系ならこんな事態になる訳がない。
ちなみに、再生医療で最先端を目指すハーバード幹細胞研究所の所長は、学者さんではなくMBAを取得しているビジネスマンだ。http://hsci.harvard.edu/people/brock-reeve-mphil-mba

こういった流れの末に、日本の科学を取り巻く環境は、学生や研究者が落ち着いて研究に専念することが出来ない状況になって来ているように思えるが、これは結局、学界の偉い先生達が自分で自分の首を絞めてしまったことなのだ。STAP騒動で生命科学分野の構造的な問題が表面化してしまった今となっては、本気で研究の道に進みたい若者にとって、日本のアカデミアは自分の将来を賭けたいとはとても思えるような所ではない。研究者を目指す頭の良い若者達が選ぶ進路は日本ではないのだろう。

森山・榎本両教授に対する岡山
大学の仕打ちに今さらになって「なんとかしないといけない」と声を挙げている大学の先生達は、今まさに研究環境を奪われている人達を研究室ごと自分の大学で引き受ける位のことをやれば良いのにと私は思う。「裁判所に任せるしかないのか?」などと悠長なことを言ってないで。

岡山大学で研究不正を告発した教授ふたりが解雇された問題が、いまネット上で話題になっている。

この問題は、20142月に週刊誌で報道されたことに端を発して、STAP騒動真っ只中に起こっていた問題で、完全にSTAP騒動の狂乱の陰に隠れてしまっていた上、20149月には批判サイトが立ち上がっているものの、かなり偏った言い分のため世論の賛同を得ることも難しく、告発者の救済に資することはないまま現在に至っている。
サイエンスライターの片瀬久美子氏は、昨年の後半からこの問題を取り上げ、その流れを受けて研究者の中からも岡山大学の対応を問題視する記事も見られるようになった。

「岡山大学の問題は、全国の大学が抱えている問題か?」2015/09/21
http://blog.livedoor.jp/pyridoxal_phosphate/archives/43635210.html
「岡山大学の良識を問う 」2015/12/07
http://blog.livedoor.jp/pyridoxal_phosphate/archives/49692159.html

しかし、STAP問題ではあれほど大騒ぎしたマスコミや科学界からはこれといった声も挙がらないまま、昨年末にはとうとう不正告発者が解雇されるという事態にまで発展してしまった。
森山・榎本両教授の解雇が決定した今年になってから、1月3日には毎日新聞が不正調査の問題点を指摘する記事を出したが、今頃になって言い出しても手遅れ感しか感じない。112日には、告発者の森山教授と、解雇を発表した岡山大学が同じ日に記者会見を開き、NHK岡山放送局毎日新聞などが報道したが、STAP報道ではリークというエサを貰ってスクープ報道しまくっていたマスコミも、取材対象が積極的にエサを撒いてくれなければ何も報道できないという取材力のなさを見た思いがする。(いま確認したらNHKはリンク切れで記事が見つからない)


『半年前、ある記者に岡山大学の件を記事にできないか相談した時、「STAPの時の様に主要な大学の先生方が問題視する声を上げてないから、記事にするのは難しいですね」と言われてスルーされました。』
https://twitter.com/kumikokatase/status/686048913011286019

これは110日の片瀬久美子氏のツイートだが、マスコミがこういった問題を記事にするには「主要な大学の先生が問題視」しているかどうかが判断基準のようだ。「権威のお言葉」がなければマスコミ自身では判断できないということらしい。そして、STAP問題ではあれだけ大騒ぎした中山敬一氏も大隅典子氏も近藤滋氏も、不正告発者が解雇されてしまう事態になった岡山大学の問題は「問題視していない」ということになるのだろう。アカデミアもジャーナリズムもなにも機能してないではないか。

NHKの記事削除も理由が気になるところだ。確か大学側に大きな問題があるという印象を与えるものだったと記憶しているが、誤報だったのか書き方が誘導的だと揉み消されたのか。ミスリードも駄目だが、理由も告げずに削除して「なかったこと」にするのも問題だろう。NHK科学文化部のツイッター・ブログでも不正告発者が解雇され大学を提訴している件について一切触れていない。両者の言い分の食い違いについて事実確認が出来ないため、迂闊なことが言えないということなのかもしれないが、記者会見まで開いて公表されている「不正告発者が解雇され大学を提訴しているという事実」さえ報道出来ないとは、マスコミの無能さもここまで酷いとは思わなかった。

ところで、問題の発端となった「週刊ポスト」の記事を書いた伊藤博敏記者は、経済事件を得意としているフリージャーナリストのようで、医療やアカデミアとは縁遠い人のように見える。森山教授とこの記者がどういう形で繋がったのか不明だが、学問的な正義でもなく、学内権力闘争の問題でもない、別の理由から「不正告発」をしようとした勢力がいて引き合わせたのではないかという気もする。扇情的な支援から受ける印象でしかないが、森山教授を神輿に担いだ人の中に、不純な動機を持つ人があるようにも感じる。
問題がここまで拗れてしまったのは、この辺のやり方に問題があったからなのかも知れない。

いずれにせよ、不正告発が原因で研究環境を奪われてしまった森山・榎本両教授と学生達は、いままさに大変困難な状況下に置かれている。不正告発者が解雇される事態に至るまで、アカデミアは知らん顔をし続けていた。いまさら『研究不正の指摘を理由に大学を解雇されるのであれば、誰も不正の摘発はできなくなる。なんとかしないといけない』と言われても鼻白むばかりだ。
https://twitter.com/turingpattern/status/687129917507506176

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