先日、リツイートでこういうツイートが流れて来た。
中辻憲夫

 リツイート数237。158件の「いいね」が付いている。迷惑な発言とはいったいどういう発言なのだろうと思い元記事を読んだら、『研究者の頭脳と時間を、違うことに使いすぎている』という対談記事の中に出て来た発言だった。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/032700107/060900010/?P=1&rt=nocnt
 その「迷惑発言」部分を引用する。

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山口 たとえば基礎研究はムダだと官僚も企業も思っているかもしれませんが、ムダではないし、むしろそれこそが本当に大事だということですね。このことは、私が「トランスサイエンス」の問題として考えていることと関わります。

 1972年、アメリカの物理学者アルビン・ワインバーグは「科学に問うことはできるけれども、科学が答えられない問題」を「トランスサイエンス」と呼び、これからの社会で問題になると指摘しました。

 東電が引き起こした福島の原発事故はその代表例で、実際にワインバーグは「原発において複数の安全装置が同時に働かなくなるような事象は、科学者が答えられないトランスサイエンス問題だ」と予言し、「だから前もって市民も参加して、起きたときの解決策をどうすれば良いかを一緒に考えなくてはならない」と述べました。ところが日本では、当初「原発は絶対に安全だ」と言って議論を封じていた「原子力村」の科学者たちが、この過酷事故が起こった途端、総ざんげを始めた。ついに、日本では科学者全体が市民から信用されないという状況を招きました。

梶田 もちろん原発問題もありますが、もう1つはやはり「STAP細胞」の問題でしょう。恐らく、この2つの件で科学者が信頼を失ってしまったのではないでしょうか。

山口 STAP細胞の当否は実のところよく分からず、10年後、15年後にようやく帰結するような問題かもしれません。梶田さんのように10年間ずっと検証し続ける。そして確かだと思ったら公表するという態度が必要だと思いますね。

梶田 はい。その態度の問題だと、私は思います。

山口 態度ですよね。STAP細胞を理研の宣伝に使おうとするような政治的態度こそが問題の核心だと思います。だから私は梶田さんがニュートリノ振動の証明のため10年間ずっと辛抱したというのは逆にすごいことだなと思います。

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 「科学者が信頼されなくなった2つの事件」として、原発事故とSTAP事件が挙げられており、STAPは理研の発表の仕方に問題があったという考えだ。再現性の確証がない段階での勇み足が一番の問題ということなのだろう。それはそれでひとつの見識だと思う。

 一方、それに対する関連分野の研究者たちの過剰反応には呆れるばかりだ。全体の文脈を読まずに、言葉尻に食いつきヒステリックに反応している。そして実は、こういうヒステリックで「頭ごなし」な姿勢こそが大衆の科学者に対する不信を招いているのである。他方で山口氏らの「宣伝に使おうとする政治的態度が問題の核心」というのも科学者サイドに偏った見方だと私は感じるし、実際にSTAP騒動が招いた科学者不信の原因を見誤っているように思える。

 私から見れば、STAP事件から見えて来た科学者不信の本質は「頭ごなし」と「ダブルスタンダード」だ。これが科学者に対する不信感となって、それはそのままニセ医学、ニセ科学の増殖へと繋がって行くのだ。これまで何度か論じて来た岡山大学の問題東京大学の問題に対する科学者たちの反応のSTAP騒動との落差にはただただ呆れるしかない。こと生命科学に関する科学者不信に関しては、東大不正問題がとどめを刺すことなるかも知れない。そしてその先にはニセ科学、ニセ医学が今まで以上に氾濫する世界が待っている。

 私自身で言えば、STAP細胞問題に興味を持ちマスコミの騒ぎと理研の不正調査の流れを見ていく中で、研究者社会というコミュニティの独特な価値観に違和感を感じ、STAP批判者達のダブルスタンダードに不信感を覚えたのが最初なのだが、先日そういう問題について書いたのでコピーしておく。

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10. 愚民 2017年06月30日 12:41
>まだ近藤教授の方が「どうすれば現場の声と行政がかみあうか」を真剣に考えているように思える

なんでこういうダブスタの権化みたいな人を持ち上げるかな…
この人達は東大の渡邊教授に対してなんか言うことはないんですか。近藤滋、大隅典子、中山敬一といった、あれだけ大騒ぎしてオボ叩きをしてきた連中が、東大分生研のことに対して沈黙していることに私は心の底から呆れ果てていますよ。

分子生物学会のホームページで「不正者は許さん!」とばかりに早稲田の調査結果にケチをつけ学位剥奪を迫る声明(博士論文の内容ではなく理研で不正認定され論文撤回に至っている不届き者の学位は剥奪せよという論理)を出した分生理事が実は不正してましたって、いったい何なんですか。みんななんで黙ってるんですか。今の分生理事長はなんか言うことはないんですか。

そういう不誠実な姿勢が世間の科学者不信に繋がるのであって、それが巡り巡って予算に影響して行くんですよ。正直言って、加藤茂明氏に続き「不正は許さん!」と叫んでいた分生理事の不正問題を、このブログですら取り上げていないことにも大変失望しています。なんでスルーしているんですか。

渡邊教授の件はバイク先生周辺では取り上げていましたが、それでも医学部の巨悪が隠蔽されそうなのに比べて分生研はちゃんと調査したから不正認定がされているんだという言い方がされていて、自分達は綺麗なんだと言いたいようで、そんな身内贔屓な言い草は、外部から見れば目クソが鼻クソの悪口を言ってるよとしか見えません。

11. 愚民 2017年06月30日 12:41
中国では研究不正は死刑というニュースに理研の高橋政代氏が『日本も不正を重罰にして、普通の研究者は過剰なルールに縛られずに自由に研究させてほしい。』とツイートしてたくさんの「いいね」が付いてますが、一部の不心得者だけが悪いんだというのなら、渡邊教授をもっと非難しなさいよ。違うでしょ?構造的に誰でも不正に手を染めかねない実態があるから何も言えないのでしょ?

https://twitter.com/search?l=&q=from%3Asato_dehanai%20since%3A2017-06-28%20until%3A2017-06-29&src=typ
これは最近知ったアカウントですが、若手研究者の本音としてこうしたリーダー世代に対する不信感は大きいんだと思いますね。
『今のお偉いさん方、やるべきことをやってやらずに、交付金がー、雑用がーって泣きごというばっか。そういうの、若い世代はちゃんと見てる。だからますます衰退する。』


13. ブログ管理人 2017年06月30日 17:36
「愚民」さん
東大の渡邉氏の件については複雑な問題もあり、まだ大学としての正式な発表がないので記事にしていないのです。

複雑な問題とは、渡邉氏はEMBO Rep.へ手紙を送り(https://sites.google.com/view/yoshinori-watanabe-corrections/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0)、編集長から「Level 1の問題」(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.15252/embj.201570080/full)として訂正を認められています。Level 1とは「元データがあり、「お化粧」程度の図の脚色」で、これは「修正可能」というのが雑誌社の判断です。

しかしながら、元図の輝度を少しいじったくらいでは図2Aの一番右のバンドは消えません。実質的に「レーンの選択的除去」(Level 3)に近いものです。ただし、Level 3は「元データや十分な説明い場合は論文撤回」ともあり、Level 3が「レーンの選択的除去」と「元データや説明がない」の両方の場合に撤回を意味するのか、あるいは元データや説明があっても、「レーンの選択的除去」の場合は撤回なのかがよくわかりません。

一方、「本来あるバンドを見えなくした処理」ですので、日本では「改ざん」に該当する可能性が高いです。小保方氏の場合、電気泳動の元データはありましたが、「T 細胞受容体遺伝子再構成バンドを綺麗に見せる図を作成したいという目的性をもって行われたデータの加工」を「改ざん」と認定されましたので、その基準からするとこの図を「改ざん」と認定する可能性はかなりあります(勿論、小保方氏の図の改ざんはとんでもない加工でした。ただし、それゆえ「不正」をしようとしたのか、それが「不正」となることをよくわかっていなかったのかがわからなかったわけです)。

雑誌社は訂正を認めたのに、大学の調査では「不正」となる場合にどのように考えるべきなのか。東大の調査結果の発表によっては、この点を考慮する必要が出てきます。


21. 愚民 2017年07月01日 18:00
>Level 1とは「元データがあり、「お化粧」程度の図の脚色」で、これは「修正可能」というのが雑誌社の判断です。

そもそも、論文が採用されるために「お化粧程度の図の脚色」を必要とする論文投稿のシステムに問題があるんじゃないんですか。実験結果をそのまま提示しても採用されないから化粧が必要になっているのでしょう?
小保方さんは、論文を査読誌に掲載してもらうにはデータを見栄え良く綺麗に化粧しなければならないと教えられたんじゃないですか。そして彼女には実験結果を誤魔化そうなんて考えがないから派手な加工をやらかして、それを渡邊教授と同じ「結論に影響しない」と主張して、そのせいで業界の袋叩きに遭ったんでしょ。結局、一番問題なのは業界の慣習なんじゃないんですか。

>雑誌社は訂正を認めたのに、大学の調査では「不正」となる場合にどのように考えるべきなのか。東大の調査結果の発表によっては、この点を考慮する必要が出てきます。

ブログ主のスタンスは承知しました。
しかし、STAP細胞論文の先例に従えば、日本分子生物学会は東大の正式発表を待つまでもなく理事長声明を出すのが筋でしょう。STAP論文では雑誌社が認めた訂正作業を進めている中、理研の調査結果が出る前から声明を出していたんですよ。何故今回は沈黙しているのですか。しかも渡邊教授は「学会理事」の名で会員ではない小保方さんに正義の石を投げつけた人です。それが恥ずかしげもなく「結論に影響しない」と言い訳している。
このことからも、あの「学会声明」がいかに異常な行動だったか分かるというものです。

日本分子生物学会が元理事・渡邊嘉典氏の不正問題に声明を出さないのであれば、STAP細胞問題で理事長声明を連発して騒ぎ立て、論文訂正作業を妨害し理研の調査に圧力をかけ続けて被告発者の権利を蹂躙したことを、若山照彦氏を除く論文著者全員に「日本分子生物学会」として謝罪すべきです。


26. 愚民 2017年07月02日 10:25
>そして彼女には実験結果を誤魔化そうなんて考えがないから派手な加工をやらかして、それを渡邊教授と同じ「結論に影響しない」と主張して、そのせいで業界の袋叩きに遭ったんでしょ。

「実験結果の誤魔化し」で思い出したのですが、遠藤高帆氏のSox21の件は「実験結果を誤魔化そう」と意図したものだったのではありませんか。その後も何も説明がありませんが、結局、DORA氏の言うように結論に都合の悪い結果を隠したものという理解で良いのですよね。つまり「結論に影響する恐れがあるので隠した」と。

私は「結論に影響しない加工」よりも「結論に影響するものを隠す」ことの方が、遥かに悪質性の高い不正だと思いますが、科学コミュニティの常識としては逆なのでしょうか。


30. 愚民 2017年07月02日 21:13
>私は「結論に影響しない加工」よりも「結論に影響するものを隠す」ことの方が、遥かに悪質性の高い不正だと思いますが、科学コミュニティの常識としては逆なのでしょうか。

本当はそうではありませんよね。彼らは相手次第で基準をコロコロ変えているだけです。
例えばTCR再構成の問題は、結論に影響する問題を隠していたと受け取られ酷い叩かれ方をしました。分子生物学会は、「該博な知識を駆使した論理構成」で笹井氏が読者を騙したかのように非難する本庶佑氏の雑誌記事を学会ホームページに転載しています。しかし調査委員会が著者らに都合の悪いものを隠す意図があったか調査したところ、隠蔽の意図はなかったと認定されています。

この本庶佑氏の記事では、STAP[幹]細胞のTCR再構成という若山氏の責任問題について、まるで笹井氏が不正の首謀者であるかのように疑いを向けています。学会ホームページ上で、シニアの責任のすり替えをしているのです。
当時の理事長以下ダブスタ連中が反省することはないでしょう。しかし当時の理事達がやったことは、現理事長が「日本分子生物学会として」きちんと詫びるべきです。

31. 愚民 2017年07月02日 23:39
>結論に影響するものを隠す

何故みんな桂報告書が信用出来ないと言っているのか。
それは理研の調査チームが、光る胎盤など結論に都合の悪いものを隠している疑いが極めて濃厚だからです。研究者の人たちも分かっているはずです。結論ありきで進んだ解析調査で、彼らが求める結果に都合の良いデータだけが集められ、結論に都合の悪い証拠が捨てられていることを。

「結論に影響しない加工」について小保方さんと石井俊輔氏に対するダブルスタンダードを世間は知っています。調査報告で結論に影響する証拠が隠されていることも分かっています。不正調査でこういう不公正が罷り通っていることに世間の人が不信感を覚えるのは当然で、それをこのままやり過ごしていたら、今後ますます科学者不信が拡大するのは間違いないでしょう。
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http://blog.livedoor.jp/pyridoxal_phosphate/archives/71554436.html#comments