Yahoo!ニュースに非常に興味深い記事があった。

『「やさしさ」が導く“一発レッド社会”――ベッキー、宮崎議員、ショーンK、“謝罪”の背景にある日本社会』http://bylines.news.yahoo.co.jp/soichiromatsutani/20160407-00056263/
『そこでは世論と呼ばれる感情的な「やさしさ」が優先され、理性的な判断はなされていません。』『ミスによって生じた小さな傷口を、集団が思いっきり開いて再起不能にするのが“一発レッド社会”です。』
『日本では、謝罪が正当化の2.5倍ほど支持される傾向にありますが、アメリカでは正当化のほうが謝罪の1.3倍ほど評価されます。』

 STAP騒動にも通じる分析だが、理研の調査委員会から不正認定をされても「STAP細胞はあります!」と言い続けた小保方さんの「正当化」が、ネットの研究者達の間で憎悪剥き出しに叩かれまくっていた状況下で、「罪を認めて大学院からやり直せば許す」という言説が当たり前のように、それがさも「やさしさ」であるように言われていた。
 その様子はちょうど、刑事ドラマで「お前が殺したんだ」と脅迫的な取調べをし、「正直に話せば罪は軽くなる。話して楽になれ。」と言う場面を髣髴とさせた。しかし、もし「私はSTAP細胞を捏造する研究不正をしました。申し訳ありません。」とでも謝罪してしまえばバッシングは止まるのかもしれないが、何のことはない、やってもいないES混入の罪を確定事実として背負わされてしまうことになるだけなのだ。
 そして、そんな圧力に対して静かに抵抗し続けた小保方さんが、先日、手記「あの日」を出版し、今回ホームページを開設したことに対して、ネットの研究者達の間からは再び非難の声が湧き上がり、印税がどうのと下世話な憶測や、侮蔑的な言葉が浴びせかけられたりしている。

 そうした科学コミュニティからの集団リンチと並んで、一部の女性たちからの感情剥き出しの猛烈なバッシングがあるが、その急先鋒のひとり片田珠美氏が変な記事を書いていた。この記事を見たときはエイプリルフールなのかと思ったが、記事の日付は42日なので本気で書いてるのだろう。

【精神科女医のつぶやき】片田珠美(180)ショック! 三度の飯より悪口好きの私に「You’re fired(おまえはクビだ)」 http://www.sankei.com/west/news/160402/wst1604020002-n1.html

 この人の代表的著書に「他人を攻撃せずにはいられない人」というのがあるが、それはまさに自分のことだったのだと告白している訳だ。世間のバッシングの殆どがこの人のような自己投影であることが、この一件にも良く表れている。

 例えば朝日のWEBRONZAには、これまた胸の悪くなるようなオボ ヘイターが勢ぞろい
しているが、小保方さんは「自立した女性」からは嫌悪の標的となり感情的に叩かれ続け、その一方でそれに対して「可哀想」と感じる女性たちも多くいて、そういった同情をすら非難の対象にする論評『なぜ小保方氏への同情論が消えないのか』が出されるなど、世間はそうした感情論で溢れかえっている。

 また、例えば社会学者の千田有紀氏などは、『小保方晴子さんの「罠」 私たちはなぜ彼女に魅了されるのか』などと客観的分析を行っているように見せかけて、自分自身の嫌悪感が剥き出しになっているのも、結局みな「鏡に映った自分」に向かって叫んでいるのだろう。報道によってイメージされる小保方さんの振る舞いは、フェミニストからは目の敵にされているようで、騒動時に集団ヒステリー状態になった原動力はそういった勢力の存在も大きいのかも知れない。

 STAP騒動は、一般人を巻き込んで日本の研究者達が踊り狂った社会現象とも言えるが、これだけ色んな要素の絡み合った事件も滅多にないだろうし、色んな意味で歴史に残る事件となるだろう。報道によって捏ね上げられた「イメージ」を基にして議論される異様な雰囲気は、事件の本丸から目眩ましする為の仕掛け人がいるのではないかという気さえしてくる。