小保方晴子氏の手記「あの日」が出版されてから、社会の反響も大きく増刷を重ねているようだが、アマゾンのレビューを見ると「批判的レビュー」の異常な多さがまず目を惹く。しかし、その多くが実際に本を読むことなく、ただただ小保方氏の人格を非難する言葉が並んだものが殆どだ。発売直後から1週間程の間トップレビューとして表示されていたものは、山口大学医学部講師の肩書きを持つ研究者のものだったが、本を読むことなく書かれたもので、本の内容に無関係な人格攻撃の言葉が並んだ異常なものだった。これは今は削除されている。
 読んでもいない本のレビューなど「不正論文」そのものだが、現在のトップレビューも、タイトルを「異常な本です」としながら、本の内容には一切触れておらず、本を読まずに書かれたものと思われる。文面から「プロの科学者」のようで、アマゾンカスタマーレビューではそのような科学者達の不正なレビューをたくさん見ることが出来る。しかし、本の内容について一切書いていないレビューに対して「参考になった」としている人達の多さには驚きを禁じえない。

 ところで、女性セブン2016218日号に『故笹井芳樹氏の妻 遺書の真意「小保方氏に伝わっていない」』という記事が出たが、あまりに酷い内容に空いた口が塞がらなくなってしまった。記事冒頭にある「読みません」や文末の遺書に関する「辞めなさいという意味なんです」という奥さんの言葉は恐らく本当だろうと思われるが、その間を繋ぐ文章があまりにも出鱈目すぎて「真実を歪めた」記事となっている。

 問題の箇所を引用する。
http://news.infoseek.co.jp/article/postseven_382675/?p=1
 同年49日、小保方氏は会見して論文の不備を涙ながらに詫びたが、「STAP細胞はあります」の言葉通り、研究結果の真実性だけは譲らなかった。
 「それは主人も同じでした。一緒に仕事もしてきて、自分でも顕微鏡で見ていましたから。当時は大変な時期だったので、彼女も頭が回らなかったのでしょう。あくまでSTAP現象を表す蛍光発色を確認しただけなのに“200回は出来た”なんて言って、誤解を招きましたよね。でも、主人は言うんです。“発色がある以上、まだ可能性はあるんだ”って。あの頃は小保方さんを信じてあげたいという気持ちが勝っていた」(A子さん)
 翌週には笹井氏も会見し、「STAP細胞だと考えないと説明がつかないデータがある」と小保方氏を擁護した。
 しかし会見後まもなく、彼女のずさんな実験ノートや、早稲田大学大学院時代の博士論文でのコピペ、写真盗用が発覚。ネイチャー論文上でSTAP現象が確認されたとするマウスが現実には違うマウスだったことも明らかになり、笹井氏の心は折れた。
 「“これはもう無理だ”って。論文を撤回するしかないと言っていました。あれだけの物的証拠を前にして、小保方さん、そしてSTAP現象自体に対する信頼が失われてしまったんです。彼女は科学者としての基礎的な教育を受けてこなかった。それは否定できないことだと思うんです。データの取り扱いとかプロセスの管理とか、“彼女はあまりにも問題がありすぎる”って、主人の失望は深かった」(A子さん)
 調査委員会が立ち上がり、笹井氏にも連日の聞き取りが行われた。A子さんの話に基づけば、当時、彼はすでに科学者としての小保方氏を見限っていたことになる。201485日、笹井氏は理研の研究棟で自殺した。

 この記事を素直に読めば、小保方氏に対する失望感が自殺の大きな要因であったように読めてしまう。ところが、実はこの記事の時系列は滅茶苦茶になっていて、それぞれの発言のタイミングが全体の経緯と違う場面で挿入されている。これを実際の時系列に並べ替えるとこうなる。

 調査委員会が立ち上がり、笹井氏にも連日の聞き取りが行われた。その前後に彼女のずさんな実験ノートや、早稲田大学大学院時代の博士論文でのコピペ、写真盗用が発覚。
 「“これはもう無理だ”って。論文を撤回するしかないと言っていました。あれだけの物的証拠を前にして、小保方さん、そしてSTAP現象自体に対する信頼が失われてしまったんです。彼女は科学者としての基礎的な教育を受けてこなかった。それは否定できないことだと思うんです。データの取り扱いとかプロセスの管理とか、“彼女はあまりにも問題がありすぎる”って、主人の失望は深かった」(A子さん)
(その後の41日、理研による小保方氏の不正認定が発表され、それを不服とする小保方氏より「不服申し立てに関する記者会見」が49日に開かれた。)
 同年49日、小保方氏は会見して論文の不備を涙ながらに詫びたが、「STAP細胞はあります」の言葉通り、研究結果の真実性だけは譲らなかった。
 「それは主人も同じでした。一緒に仕事もしてきて、自分でも顕微鏡で見ていましたから。当時は大変な時期だったので、彼女も頭が回らなかったのでしょう。あくまでSTAP現象を表す蛍光発色を確認しただけなのに“200回は出来た”なんて言って、誤解を招きましたよね。でも、主人は言うんです。“発色がある以上、まだ可能性はあるんだ”って。あの頃は小保方さんを信じてあげたいという気持ちが勝っていた」(A子さん)
 翌週には笹井氏も会見し、「STAP細胞だと考えないと説明がつかないデータがある」と小保方氏を擁護した。
 しかし、6月には若山氏が「小保方氏から戻って来た細胞は若山研にいないマウス」と記者会見で発表し、小保方氏も論文撤回に同意することとなった。(論文撤回後にこの発表は間違いだったと訂正されるも、報道はされなかった)
 連日の週刊誌などからのバッシング報道が続き、「マスコミなどからの不当なバッシングに疲れた」という遺書を残して、201485日、笹井氏は理研の研究棟で自殺した。

 同じ事実を順番を入れ替えて並べることによって、まったく違う印象に仕上げていたことが分かる。これでは、文末の言葉もどういうニュアンスで発せられた言葉なのか分かったものではない。
 STAP報道ではこういった出鱈目な報道が蔓延していた。事実関係を並べ替えて「真実を歪めた」記事を書く週刊誌報道は、今に始まったことではないが、情報の切り貼りをして事実関係を捻じ曲げ、故人や未亡人の発言までも「バッシングに利用」する報道はあまりにも卑劣で、こうした記事には吐き気さえ覚えてしまう。
 確かに奥さんも騒動の原因となった小保方氏を恨んでいる部分もあるだろう。言葉の端にやりきれなさのようなものは感じられる。しかし、記事で匂わされているのは「憎しみ」とも取れる感情であり、そのような印象操作で「対立構造」を作り出そうとする記者の下劣さには怒りを覚える。

 自分達の正義が間違っていたことを認めたくない者達の、断末魔の叫びはまだ続いている。



※追記
前にアマゾンカスタマーレビューを見た時は、批判的レビューの方が圧倒的に多かったのだが、今では肯定的レビューの方が多くなっているようだ。最初に、読んでもいない者達がワッと押し寄せ、手記の内容に触れないバッシングレビューで溢れかえり、次第に読み終わった人達のレビューが増えて行ったということだろう。今の時点でアマゾンカスタマーレビューを見たら、冒頭に書いた『「批判的レビュー」の異常な多さがまず目を惹く』がピンと来ないかもしれない。