今月26日に出されたSTAP細胞論文に関する調査結果に大変困惑している。
STAP細胞とされたものが実際はES細胞であった可能性が高く、しかもそれは若山研究室で作成されたものだったとされたのだ。「混入」という表現ではあったが実際には汚染ではなく故意によりすり替わっていたと推定されている。もし仮に小保方氏が若山研究室内にあった既存のES細胞を何らかの手段で手に入れSTAP細胞と偽っていたということであれば、かなりの長期間にわたり架空の実験で協力者達を騙し続けていたことになるが、そのような無茶苦茶な不正が行われることがあり得るとは俄かには信じがたい。ES細胞のプロ達の目を欺くためにどれだけ危ない橋を渡り続けなければならないか。動機も不明な知能犯が超一流の科学者達をひたすら騙し続けるというのは現実的に無理がありすぎて、浮世離れした人たちが描く漫画チックな妄想としか思えない。その一方で、本人の故意でないとしたら、彼女を罠に嵌めようとする悪意が存在し、例えば今回の調査試料の方が摩り替えられた等の荒唐無稽な想像を加えなければ説明の付かない出来事が起きたということになるだろう。この調査報告はまったくなにがなんだか分からない。

以前、学者の偉い先生たちが、STAP細胞論文は世界三大不正に数えられる大事件だと言った。東京大学での大量の論文不正や、ノバルティスファーマの研究不正など比較にならないほどの大事件だということか。確かに超一流の科学者たちが関係し「世紀の大発見」と謳われたものが不正論文というのは日本の科学者達にとっては大事件なのだろう。しかしいったいSTAP細胞がバルサルタンと比べて社会に対する実害がどれほど大きかったのだろうか。論文発表とほぼ同時に疑義が出され世界中の研究者から一度も引用されることなく取り下げられた論文が、科学の歴史の中でどんな悪影響を及ぼしたというのだろうか。

STAP問題に対する科学者社会の対応に私は違和感を感じ続けていたわけだが、科学者達の不正追及の目的が、社会正義ではなく「科学コミュニティの秩序」の方にあるから、私達の認識とこれだけのズレがあるのだろう。だから、この集団リンチが全体主義の様相を呈しているのも当然のことなのだろう。ファシズムにとって最も大切なものは”秩序”なのだから。
当初から指摘されていた小保方氏のデータ管理の杜撰さは、科学者としてあるまじき非常識さなのだろう。彼らにしてみれば本来そこにいるはずのない異分子が紛れ込み、科学者社会の”秩序”を根底からひっくり返す程のオイタをしてしまった。彼らにとって小保方氏はカップ焼きソバに混入したゴキブリに見えたことだろう。

今にして思えば、石井調査委員会の小保方氏に対する扱いは焼きソバに混入したゴキブリを取り除く作業だったのかもしれない。そして分子生物学会理事長を初めとした科学コミュニティの理研に対する詰め寄り方は、ゴキブリの混入は自明なのでその原因を説明せよという意味だったのか。まったく適正な手続きを踏まない科学コミュニティの小保方氏に対する人権を無視した扱いは、文字通りの虫ケラ扱いだったのか。
そして対応を誤ったぺヤングの工場が操業停止したように理研CDBは解体された。

この問題が、今後どのような経過を辿るのかは分からない。ただ、科学者社会の中では小保方氏は再起など許されない異物でしかなかったと結論付けられたようだ。
一研究者・教育者の意見という科学者としては珍しく客観的視点からSTAP問題を論じているブログがあるが、その中で遠藤高帆氏や他の研究者たちとのコメント投稿でのやり取りを通して科学者達の傲岸さが浮き彫りになった。ツイッターなどネットを通し、権威を鵜呑みに頭ごなしに物事を決め付け世間に垂れ流すサイエンスライターの質の悪さを目の当たりにした。
私はこのブログ主のような人こそ「科学コミュニケーター」として科学と社会の架け橋になれば良いのにとちょっと思ったりしている。ただまあ今回の出来事を通して植えつけられた科学者に対する不信が消えることはないだろうが。