東京都議会で質問に立った女性議員に「早く結婚した方がいいんじゃないか」という野次が飛び、その様子がYouTube動画でも公開されたり、報道でも大きく取り上げられて大きな波紋が起きている。
この野次が女性蔑視で相手を侮辱している発言であることは疑いようが無く、問題発言として暴言を受けた議員が抗議するのは当然のことだろう。しかし、野次を発した人物は名乗り出ることなく、議会も発言者を特定しない方向で収めようとしているため大きな批判が起きている。
野次を飛ばした人物は、公の場で人を侮辱する発言をしているわけで、その人物は暴言を謝罪するか自分の発言の正当性を述べるかする義務がある。「匿名による誹謗中傷」を認めるようなことでは、都議会は有権者の信頼を失うことになるだろう。

ところが今、ネット上ではこの女性議員の素行についてあれこれ取り沙汰されていて、野次られて当然のような雰囲気を醸し出してさえいる。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20140620-00036575/
最初の一行でこの筆者の品位の無さを感じて全部を読み進めるのに一苦労したが、そこで紹介された動画と筆者の感じ方を見て、野次を受けて議員が涙を流した理由が良く分かった。議員はこの記事に紹介されているようなこれまでの素行やらなんだかんだで色々言われることも多かったのだろう。
野次を浴びた質問の動画を見ると、女性議員として女性問題について議員なりに真剣に考えて質問していることが質問内容から伺える。議員は都議会での初めての一般質問だったとのこと。その初めての質問で、議員としての役割を果たしたいと自分が真剣に考えて練り上げた質問をしている最中に自分の人格を否定する発言をされてしまい、「お前の言うことなど価値は無い」とでも言うように議員としてのすべてを否定されたような無力感を感じたのではないだろうか。
その悔しさはいかばかりかと、改めて議員に対する同情の念を禁じえない。

「どの口が言うのか」
確かにその通りなのかもしれない。そして議員に貼られたレッテルを見れば「目立ちたがりのパフォーマンスで女性問題を利用しようとしている」ようにも見えるのかも知れない。山本一郎氏の記事を読み、改めて問題シーンの動画を見たとき、野次のトーンから発言者はそういう認識で議員を見ているのではないかと私は感じた。
しかし、議員に貼られたレッテルがなければ、外見的には「議員一年生が精一杯考えて練り上げた質問を議会にぶつけ、都民の役に立ちたいという思いを踏みにじられた」姿なのである。

議員がどのような決意で議会に臨んだのかは本人以外には分からない。
しかし私は「議員は都民の役に立ちたいという願いから都議会議員になり、議員になって初めての議会質問で自分が精一杯考えて練り上げた質問を議会にぶつけた」質問だったと思いたいしそう思っている。
それを踏みにじるような野次を飛ばした人物は正直に名乗り出て謝罪するか、もしくは自分の発言が正当だったと思うのなら正々堂々と反論を展開しなければならない。
「匿名による誹謗中傷」をしたまま頬被りでは、議員の資格などあろうはずがない。